採用スピードについて
「採用したいと考えていた応募者から、他の企業への就職を理由に二次面接、三次面接を辞退されてしまう」上海ではよく発生するケースです。応募者が自社よりも他の企業に魅力を感じる場合は本人の意思を尊重するしかありませんが、採用スピードが採用機会の喪失に繋がっているケースも少なくありません。
先日、日系企業の総経理と面接回数についてお話しました。その企業では、採用決定までに通常3回の面接を行っているそうです。
1回目は募集部門の担当者が面接を行い、会社と募集業務についての説明及び応募者経歴の確認、募集職種の適正を見ることを目的としているそうです。
2回目も募集部門の担当者が行い、双方で業務内容と待遇条件の細かい確認を行っているそうです。
3回目は人事マネージャーが行い、前回までの面接で確認した内容を再度確認し、会社の規則等を説明しているそうです。
このように、日系企業では通常2回若しくは3回の面接を経て採用決定に至っており、ほとんどの場合、1回目の面接から入社までのスピードが1ヶ月前後となっています。各回の面接内容(目的)はおおむね下記の表のようにまとめることができます。
面接回数 | 担 当 | 内容(目的) |
---|---|---|
一回目 |
募集部門 人事部門 |
求人情報以外の企業情報もヒアリングします。 |
二回目 |
募集部門 人事部門 |
企業から提供された全ての情報をお伝えします。 |
三回目 |
人事部門 総経理 |
人材の意思を尊重します。 |
勿論、個々のケースによって情況は異なってきますが、面接基準を明確にし、1回1時間程度の面接を2回以上実施すれば、採用後の大きなトラブルを防ぐことができると言えるでしょう。
ここで注意したいのは各面接の間の検討・調整期間(ブランク)と面接担当者です。上海では企業が魅力を感じる人材ほど、複数の企業と同時に接触し、それぞれの企業を比較しながら就職活動を進めています。人材は自社が検討・調整している期間、他の企業と接触しているのです。こう考えると、人材確保において、採用スピードが如何に重要な意味を持っているかがわかります。
書類選考から1回目の面接、1回目から2回目、2回目から3回目までのブランクが短いほど、魅力的な人材を短期間で採用できる可能性が高まり、採用担当者の決断スピードが採用スピードを制約する要素になっているのです。企業によっては面接回数を1回とし、面接に2時間以上かけるなどの工夫を凝らしているケースもあります。
また、企業のスケジュール通りに採用活動が進まなくなってきているのが上海の現状です。魅力的な人材に対してはあまり採用スケジュールにこだわらず、採用スピードを短縮してゆく工夫も有効です。
因みに上記の表の3回目の面接は試用期間を利用することにより調整できる場合があります。本社からの出張者のスケジュールに合わせて最終面接を設定するケースがありますが、採用を前提とした人物確認のための面接は試用期間中でも十分行うことができるのではないでしょうか。
応募者は採用スピードを企業の自分に対する評価の表れと捉えています。企業の採用スピードには応募者の決断を促し、モチベーションを向上させる効果も期待できます。