採用基準の調整について
ある日系サービス企業は日本でトップクラスの実績を持つ企業です。比較的新しい業種でもあり、中国には同業他社はほとんど存在しません。現在、中国全土の日系、中国系企業から仕事の依頼が入っており、業務拡大のスピードに対し、人材採用がやや遅れつつあるとのことでした。
採用条件のポイントは下記の通りです。
1. 中国籍女性、25~30歳前後、戸籍不問。
2. 専門用語を熟知し、通訳能力が高いこと。
3. きれいな中国語(標準語)を話すこと。
4. ファッションが好きで、センスが良いこと。
5. 大勢の前で臆せず話ができること。
6. サービス業の経験があること。
7. 苦労を厭わないこと。
8. その他(身長、容姿等)
一見、テレビ局のアナウンサーの募集要項のようですが、募集職種は「通訳兼技術専門職」です。実は今回の採用責任者である日本人総経理は、かなり以前から業務拡大を見込まれており、これまで様々なルートを通じて積極的に人材と会ってこられました。
中国の人材に対する理解も深く、独自の視点をお持ちです。
前述の通り、中国にはこの企業の同業他社はほとんどありません。従い、総経理も経験者の採用は難しく、時間が掛かるとの認識で、人材採用の遅れが業務推進スケジュールにマイナスの影響を及ぼすことを懸念されています。
そこで採用基準を調整し、より多くの人材と面接を行うこととしました。採用後に社内で教育してゆける内容(2、4、6項)については絶対条件とせず、業務を習得してゆく素質を重視する方針で採用活動を進めました。これにより人材との面接回数も増え、採用活動は順調に進んでいます。
一方、ある日系貿易会社では郊外への事務所移転と組織変更に伴い、通訳をメイン業務とする女性の「業務アシスタント」を募集しています。
採用責任者である日本人総経理は、事務所移転が決定した数ヶ月前に採用活動を始め、これまで多くの人材と面接をしてきました。
規模の小さな組織であるため、今回募集する人材には出納業務や事務所管理、来客応対等の庶務全般もやってもらわなくてはならないとのことでした。能力的には通訳レベルの日本語とエクセル、パワーポイント等に習熟していることが条件です。総経理が出席する接待や出張に同行でき、多少のお酒が飲めることも欠かせない条件です。
この企業の総経理は採用するなら自分が100%満足できる人材を採用したいというお考えで、面接でひとつでも足りない部分が感じられれば採用はしないとのことでした。現時点ではまだ人材が採用できておらず、前述のようなアシスタント業務を全て総経理ご自身でやられています。(通訳はレンタルで対応。)
勿論、企業の考え方や個々の募集状況は異なるので一概には言えませんが、採用活動が難航している場合、必ず何らかの原因が存在するものです。その原因を理解し、採用基準に反映させることで採用活動にも新しい変化が見られるはずです。
また、採用基準を調整した結果、当初想定していたよりも少ない予算(給与)で人材を採用できたというケースも発生しています。
ポイントは当初設定した採用基準が絶対ではないということです。採用活動の過程において応募者や人材会社から収集した情報を分析し、必要に応じて採用基準を調整してゆくことで、より効果的な採用活動を進めることができると言えるでしょう。